サービス名の決め方|使われる名前の5つの型と、有名サービスの由来に学ぶ

店には場所があり、商品には形があります。サービスにはどちらもありません。家事代行も、出張撮影も、経理の代行も、犬の散歩も、お客さまが受け取るのは「何かをしてもらった」という体験だけで、手元には何も残りません。だからサービスでは、名前がそのまま商品になります。検索して見つけ、アプリの画面で押し、友だちに「◯◯で頼んだよ」と伝える——名前が呼ばれるたびに、サービスが一回売れる、と言ってもいい。
この記事では、メルカリ・LINE・食べログ・Zoom・Uber・Airbnb など、誰もが使うサービスの名前がどう生まれたかを手がかりに、サービス名の「5つの型」と決め方の5手順、アプリ名・URL・商標の決まりまでをまとめます。最後に、4つの架空のサービスに実際に名付けた実例を、由来つきで載せます。
有名なサービス名は、どう生まれたか
先に、答えの出た名前を見ておきます。商品名の由来が「音・物語・状態」に寄るのに対して、サービス名は「何をしてくれるか」を動詞で握った名前が目立ちます。そして、多くが最終的に動詞そのものになりました(ググる、LINEする、メルカリに出す)。
| サービス名 | 由来 | 型 |
|---|---|---|
| メルカリ(2013年) | ラテン語の mercari「商いをする」から。英語の market・merchant と同じ根 | 引用(古語) |
| LINE(2011年) | 東日本大震災のあと、人と人をつなぐ「電話線」と、公衆電話に並んだ「行列」の両方の意味を込めて | 約束(つなぐ) |
| 食べログ(2005年) | 「食べる」+「ログ(記録)」。食べた店を記録して共有する、という行為そのもの | 動詞 |
| クックパッド(1998年) | cook(料理する)+ pad(メモ帳)。台所に置くレシピ帳のイメージ | 動詞+道具 |
| ぐるなび(1996年) | 「グルメナビゲーション」の略。何をするサービスかを4文字で言い切る | 説明の略 |
| じゃらん(1990年) | インドネシア語の jalan-jalan「散歩する・ぶらぶら旅する」から | 引用(外国語) |
| 一休(1998年) | 「一休みする」。高級ホテル・旅館の予約サービスに、休息という約束を載せた | 約束 |
| ココナラ(2012年) | 「ここなら(できる・頼める)」という会話の一言から | 約束(会話体) |
| サイボウズ(1997年) | 「サイバー」+「坊主」。難しい情報共有を、小僧のように身近にする | 造語 |
| Zoom(2011年) | 英語の動詞 zoom「ズームする・さっと動く」。会議が「一瞬でつながる」を一語で | 動詞 |
| Uber(2009年) | ドイツ語の über「上に・超えて」。英語圏で「最高の」という俗語にもなっていた | 引用(外国語) |
| Airbnb(2008年) | 創業者が自宅の床にエアマットを敷いて泊めた「Air Bed and Breakfast」の略 | 説明の略+物語 |
| Spotify(2006年) | 創業者2人が部屋越しに叫んだ言葉の聞き間違いから。後に spot+identify と説明された | 造語 |
| Netflix(1997年) | internet + flicks(映画の俗語) | 造語(合成) |
| Instagram(2010年) | instant(即席の)+ telegram(電報)。撮ってすぐ送る、という行為 | 造語(合成) |
| Slack(2013年) | 「たるみ・ゆとり」の意味の英単語。後に Searchable Log of All Conversation and Knowledge の頭字語だと説明された | 状態+頭字語 |
※各社の公式サイト・創業者のインタビューなど公開資料で語られている由来をもとにまとめています。
共通しているのは、名前が「サービスを受けたあとの姿」か「サービスがする行為」のどちらかを一語で持っていることです。「一休」は休んだあとの姿、「食べログ」は記録するという行為、「LINE」はつながるという約束。機能の説明はありません。「オンライン飲食店予約サービス」と名乗ったサービスは、一つも残っていません。
サービス名が、店名や商品名とちがう3つのこと

1. 売り場が画面の中にある。店名は看板で、商品名は棚で見られます。サービス名は、検索結果の1行、スマホのホーム画面のアイコンの下、予約ページの見出しで見られます。スマホのホーム画面に出る名前は、全角なら6〜7文字ほどで「…」と切れます。「横浜ハウスクリーニングサポート」は「横浜ハウスク…」になります。
2. 口で伝えられる。サービスは紹介で広がります。「◯◯で頼んだら良かったよ」「◯◯しといて」。口に出しやすく、聞き取って打ち込める名前でないと、紹介がそこで止まります。英字のサービス名にカタカナの読みを必ず添えるのはこのためです。
3. 名前が「担当者」になる。形がないサービスでは、お客さまは名前に向かって話しかけます。「メルカリに出す」「Zoomする」「LINEして」。動詞になれる名前は、それだけで広告費を節約します。逆に、長い名前は動詞になれず、略されて別の名前で呼ばれます(「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」→「ユニバ」)。略されるなら、略された形まで自分で決めておくのが正解です。
手順1. サービスの「動詞」を決める

名前を考える前に、このサービスをお客さまの側の動詞で言うと何か、を決めます。提供者の動詞(掃除する・撮影する・記帳する)ではなく、お客さまに起きることの動詞です。
- 家事代行——「掃除する」ではなく「帰ったら片づいている」「週末が戻ってくる」
- 出張撮影——「撮影する」ではなく「あの日が残る」「泣いても大丈夫」
- 経理代行——「記帳する」ではなく「数字が見える」「10日に分かる」
- 犬の散歩代行——「散歩する」ではなく「留守中も安心」「写真が届く」
この動詞が決まれば、候補は自然に絞れます。「片づいている」からは整う・澄む・ととのう、「あの日が残る」からは灯・栞・しるし、と言葉が出てきます。逆に動詞が決まらないまま考えると、「◯◯サポート」「◯◯サービス」のような、何も約束しない名前に落ち着きます。
手順2. 「入口」を決める
お客さまがどこからサービスに出会うかで、向く名前は変わります。入口は一つに絞るのがこつです。全部の入口に合わせようとすると、どの入口でも二番手の名前になります。
| 主な入口 | 名前に求められること | 向く型 | 例 |
|---|---|---|---|
| 検索(「横浜 家事代行」で探される) | 何のサービスか一目で分かること。業態語を含むか、ページ名に業態語を添えられること | 動詞・説明 | 食べログ、ぐるなび、くらしのマーケット |
| アプリストア・ホーム画面 | 短さ(全角6文字以内)。アイコンにできる1文字か図形があること | 造語・動詞 | LINE、メルカリ、Zoom |
| 紹介・口コミ | 口に出しやすく、聞いて打てること。「◯◯で頼んだ」と言いやすい3〜5音 | 約束・人格 | 一休、ココナラ、タスカジ |
| チラシ・紹介状(地域のサービス) | 信頼感。誰がやっているかが伝わること。日本語のほうが安心されやすい | 約束・説明 | 「◯◯家事サポート」型 |
| 法人の担当者に売る(B2B) | 会議で口に出して恥ずかしくないこと。英字で書けて、資料の見出しに収まること | 造語・引用 | Slack、freee、SmartHR |
手順3. サービス名の「5つの型」から選ぶ

サービス名の型は5つです。店名や商品名の型と重なる部分もありますが、「動詞」と「約束」と「人格」の3つはサービスに特有で、形のないものを呼ぶための型と言えます。一つのサービスに2つの型を重ねてもかまいません(食べログ=動詞+道具、Airbnb=説明の略+物語)。
先に決めた「動詞」と「入口」から、向く型はほぼ決まります。検索が入口なら動詞か説明、アプリなら造語か短い動詞、紹介なら約束か人格、法人向けなら造語か引用。型を先に決めてから候補を出すと、会議が「好き嫌い」で終わりません。
| 型 | 例 | 向いているサービス | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 1. 動詞の型(行為をそのまま) | Zoom、食べログ、クックパッド、ググる | 行為が新しいサービス。「これをする」が一語で言えるとき | 普通の動詞は商標が取りにくい。「食べ」+「ログ」のように、二語を合わせて独自性を出す |
| 2. 約束の型(受けたあとの姿) | 一休、LINE、ココナラ、freee | 安心・楽・自由など、気分を売るサービス。個人向けの代行・予約 | 約束が大きすぎると裏切りになる。「絶対」「完全」「No.1」は景品表示法にも触れる |
| 3. 造語の型 | メルカリ、サイボウズ、Spotify、Netflix | アプリ・ウェブサービス。商標と URL を確実に押さえたいとき | 最初は意味が伝わらない。由来を一言で語れる材料(mercari=商いをする)を持つ |
| 4. 引用の型(外国語・物語・歴史) | Uber、じゃらん、Amazon、Airbnb の物語 | 世界観で選ばれるサービス。海外展開を考えるサービス | 読めない名前は検索されない。読みを添える。その言語圏で悪い意味・別の商標になっていないかを確かめる |
| 5. 人格の型(呼びかける相手) | ジモティー、タスカジ、Siri、Alexa | 「頼む」「相談する」相手がいると感じてほしいサービス。代行・シッター・相談 | 幼くなりすぎると信頼を失う。「〜ちゃん」「〜くん」は個人向けの一部の業種だけ |
手順4. 画面と口で試す
候補が5つほどに絞れたら、紙の上ではなく実際に使われる場所で試します。サービス名は、ここで落ちる候補がいちばん多い手順です。
「一休で取っといて」——通る
「メルカリに出しなよ」——通る
「横浜共働き家庭向け家事代行で頼んだ」——言い切る前に話題が変わる
- ホーム画面の試し——全角6文字(英字なら11文字)で切れないか。アイコンにする1文字が決まるか
- 口の試し——家族に一度だけ聞かせて、翌日に言えるか。聞いた音でそのまま検索して出てくるか(「タスカジ」は出る、「Tasq」は出ない)
- URL の試し——半角英字で書いた形が読めるか。「ototo」のように区切りが分からない綴りは避ける。ハイフンは口で伝わらない
- 見出しの試し——「◯◯|横浜の家事代行」のように、名前の後ろに説明を一行添えて、検索結果の見出しとして成立するか
- 動詞の試し——「◯◯する」「◯◯で頼む」と言って不自然でないか。3〜5音の名前はここで強い
手順5. 商標と登録名を確かめる
サービス名の商標は、商品の商標とは区分が違います。商品は第1類〜第34類、サービス(役務)は第35類〜第45類。家事代行は第37類(清掃)や第45類(家事の代行)、写真撮影は第41類、経理代行は第35類、ペットの世話は第45類、というように、自分のサービスがどの区分かを先に決めてから調べます。
- 特許庁所管の無料検索「J-PlatPat」で、同じ・似た名前が登録されていないかを調べる。区分ごとに見る。有名なサービス名(メルカリ、LINE など)は、別の区分でも避ける
- 普通名称・品質表示は登録できない——「家事代行サービス」「オンライン経理」は誰のものにもならない。造語・引用・約束の型が強いのはこのため
- ドメイン(URL)・アプリストア・SNS のアカウント名が同時に取れるかを見る。サービス名では、商標より先に URL が取れないことのほうが多い
- 会社名とは分けて考える——サービス名は会社名と同じでなくてよい。むしろ、2つ目のサービスを出すときに分かれていたほうが楽(会社は屋根、サービスは部屋)
SmartNameは商標の調査を行いません。候補が決まったら、必ずJ-PlatPatで確認し、本格的に育てるサービスなら弁理士への出願相談をおすすめします。
サービス名ならではの決まり
| 決まり | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 商標法(役務) | サービスは第35類〜第45類。先に登録した人の権利。普通名称や品質表示は登録できない | 「家事代行サービス」は登録不可。有名サービスのもじりは危険 |
| 景品表示法 | 根拠のない「No.1」「最安」「完全」は不当表示になる | 「日本一安い家事代行」「完全記帳」を名前に入れない |
| 名称の制限がある業種 | 法律で名乗れる名前が決まっている業種がある。医療法(病院・クリニック・診療所)、銀行法(銀行)、保険業法(保険)、士業の名称(税理士・行政書士など) | 経理代行が「◯◯税理士サービス」を名乗ると税理士法に触れる。「クリニック」は医療機関以外は使えない |
| 特定商取引法の表示 | ネットで申し込みを受けるサービスは、事業者名・住所・連絡先の表示が必要。サービス名だけでは足りない | サービス名とは別に、運営者(個人名か会社名)を明記する |
| 屋号・会社名との関係 | サービス名は登記しない。会社名(登記)・屋号(開業届)とサービス名は別々に持ってよい | 会社「◯◯合同会社」、サービス「ととのえ便」のように分ける |
※法律の最終確認は、特許庁・消費者庁・各業法の所管官庁の資料と専門家(弁理士・行政書士)にお願いします。
実例:4つのサービスで、実際に名付けてみた
ここからは、SmartNameのAIネーミングシステムに4つのサービス(いずれも試験用の架空のサービス)を依頼し、実際に生成された候補から3つずつを載せます。由来は結果画面でお届けする解説文そのままです。それぞれの「動詞」と「入口」が、名前のどこに現れているかにご注目ください。
事例1:横浜の共働き家庭向けの、家事代行(掃除と作り置き)

依頼の要点:3人の子どもを育てながら働いてきた母親が創業。同じスタッフが毎回来るので家の勝手を覚えてくれる。作り置きは子どもが食べられる薄味。動詞は「帰ったら片づいている」。入口はチラシと検索。お客さまの家に入る仕事なので、信頼感が一番。
家事代行は「ハウスキーピング」「メイド」のような横文字を避けたい、という依頼でした。生成された候補は、「◯◯家事」のように業態を後ろに置いて安心の一言を添えた形、英語で「変わらない・毎回同じ人が来る」を約束する形、「家路」のように帰る場面そのものを屋号にした和の形の3つの方向に分かれています。
事例2:家族写真の出張撮影(七五三・お宮参り・誕生日)

依頼の要点:元ウェディングカメラマンの夫婦。泣いても待てる。かしこまったポーズではなく自然な表情。動詞は「あの日が残る」。入口はアプリと SNS のハッシュタグ。
撮影サービスは「スタジオ」「フォト」を名前に入れたくなりますが、依頼者は写真館ではないことを大事にしています。生成された候補も、撮る行為ではなく、残るもの・その日の光の側から名付けています。
事例3:中小企業向けの、オンライン経理代行

依頼の要点:元銀行員が創業。融資の相談に来る社長が自社の数字を把握していないのを見て始めた。動詞は「数字が見える」。入口は法人の担当者と検索。URL とアプリ名に使える一語で、「クラウド」「AI」「会計」は使わない。
B2B のサービス名は、社長が会議で口に出して恥ずかしくないことが条件になります。候補は、業態語「経理」を頭に置いた日本語、領収書を「ポン」と送る擬音を畳んだ造語、17世紀の簿記の言葉を借りた英語に分かれました。
事例4:東京23区の、犬の散歩代行とペットシッター

依頼の要点:元動物看護師が創業。スタッフ全員が動物看護師かトリマーの経験者で、急な当日依頼にも8割応えられる。動詞は「留守中も安心」。入口はアプリ。地名は使わない、「ワンワン」のような幼い言葉も使わない。
ペットのサービスは、飼い主に向けた名前でありながら、犬のことを分かっている人がやっていると伝わることが要ります。候補は、業態を後ろに置いた安心の日本語、散歩をそのまま英語一語にしたアプリ向きの名前、留守を守る古い職の名を借りた雅語に分かれました。
※いずれも開発時の試験依頼で実際に生成された候補です(実在のサービスではありません)。実例ギャラリーには、ほかの業種の生成実例もあります
やりがちな失敗3つ
- 会社名をそのままサービス名にする——最初は困りませんが、2つ目のサービスで必ず困ります。会社は屋根、サービスは部屋。部屋には部屋の名前を
- 機能を全部載せる——「かんたん・安心・オンライン経理代行サービス」は説明文であって名前ではありません。動詞を一つ握り、残りは名前の下の一行に書きます
- 画面で試さずに決める——紙の上では良い名前が、ホーム画面で「…」と切れる、検索で同名の別サービスが先に出る、URL が取れない。候補が5つに絞れた時点で、手順4と5を先にやります
費用の目安
ネーミング専門会社に依頼すると、20案で15万円前後が一般的です。SmartNameは独自のAIネーミングシステムにより、6,000円(10案)〜17,000円(40案)。全案に200〜300字の由来の解説文がつき、数分でお届けします。サービス名では、動詞・約束・造語・引用の型を系統として設計し、検索向きの「何をしているか伝わる名前」とアプリ向きの「短い一語」を混ぜてお届けします。
よくある質問
会社名とサービス名は同じでいい?
同じでも法律上の問題はありません。ただ、サービスが増えたときに分けにくくなります。会社名を「屋根」、サービス名を「部屋」と考え、サービス名はサービスごとに決めるのが長い目では楽です。
サービス名は登記や届出が必要?
不要です。登記するのは会社名、開業届に書くのは屋号で、サービス名はどちらとも別に自由に決められます。守りたければ商標(第35類〜第45類)で登録します。
英字のサービス名は日本で通じる?
通じますが、読みと書き(検索で打てるか)を先に確かめてください。英字のサービス名には、ロゴやページ見出しにカタカナの読みを添えるのが定石です。
「◯◯サービス」「◯◯サポート」は付けたほうがいい?
検索が入口なら、業態語(家事代行・経理代行)を名前の下の一行に添えれば足ります。名前そのものに「サービス」「サポート」を付けると、何も約束しない名前になりがちです。
AIにサービス名を頼むと、どんな形で届く?
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