商品名の決め方|売れる名前の6つの型と、有名商品の由来に学ぶ

会社名や店名と、商品名はちがいます。店名は「場所」を持ちます。看板があり、地図に載り、常連が名前を覚えます。商品名にはそれがありません。スーパーの棚で3秒、通販の検索結果で1行、友だちの口コミでひと言。その一瞬に選ばれなければ、どんなに良い中身でも手に取ってもらえない——商品名は、会社名よりも「働く量」が多い言葉です。
この記事では、カルピス・ポカリスエット・じゃがりこ・Bluetooth など、誰もが知る商品名がどう生まれたかを手がかりに、商品名の「6つの型」と決め方の5手順、商標や表示の決まりまでをまとめます。
有名な商品名は、どう生まれたか
先に、答えの出た名前を見ておきます。どれも「意味を説明した名前」ではなく、音・物語・状態のどれかを一つ握って、あとは捨てた名前です。
| 商品名 | 由来 | 型 |
|---|---|---|
| カルピス(1919年) | 「カルシウム」と、サンスクリット語で最上の味を指す「サルピス(熟酥)」を合わせた造語 | 造語 |
| ポカリスエット(1980年) | 「ポカリ」は意味のない明るい響き、「スエット」は汗。汗で失った水分を補う飲み物であることを後半だけで伝える | 造語+説明 |
| じゃがりこ(1995年) | 「じゃがいも」と、開発担当者の友人「りかこ」さんの名前を合わせた | 音+人名 |
| ガリガリ君(1981年) | かき氷を「ガリガリ」とかじる音に「君」をつけて、キャラクターにした | 音 |
| ポッキー(1966年) | 食べるときの「ポッキン」という音から | 音 |
| 写ルンです(1986年) | 「写るんです」という会話の一言をそのまま商品名に。カメラの知識がない人に「押せば写る」ことを伝えた | 説明(会話体) |
| お〜いお茶(1989年) | 発売時は「缶入り煎茶」。呼びかけの言葉に変えてから売れた、名前で売上が変わった代表例 | 説明(会話体) |
| ヤクルト(1935年) | エスペラント語でヨーグルトを意味する「ヤフルト(jahurto)」から | 外国語 |
| ウォークマン(1979年) | walk+man の和製英語。当初アメリカでは別名で売られたが、結局この名が世界で通った | 造語 |
| Häagen-Dazs(1961年) | ニューヨーク生まれ。北欧らしく聞こえるように作った、意味のない綴り | 造語 |
| Bluetooth(1998年) | 10世紀にデンマークとノルウェーを統一した王「青歯王ハーラル」から。機器を「つなぐ」規格の名に | 引用(歴史) |
| Google(1998年) | 10の100乗を表す「googol」の綴りちがいから。膨大な情報を扱う意味 | 引用(数学)+造語 |
| ほろよい(2009年) | 飲んだあとの「ほろ酔い」という状態をそのまま名に。度数の低さを説明せずに伝える | 状態 |
※各社の公式サイト・公開資料で語られている由来をもとにまとめています。
共通しているのは、商品の「一言」が先にあって、名前はその一言を最短で運ぶ道具だということです。「お〜いお茶」は「気軽に呼べる日本茶」、「写ルンです」は「誰でも押せば写る」、「ほろよい」は「軽く酔える」。名前が説明文になっていません。
手順1. 商品の「一言」を決める
名前を考える前に、この商品を一言で言うと何か、を決めます。「北海道の小麦で焼いた、砂糖を使わない朝のグラノーラ」——ここまで言えれば、名前の候補は自然に絞れます。逆に一言が決まらないうちは、どんな名前も「悪くないけど決め手がない」になります。
- 何が新しいか(味か、原材料か、使い方か、値段か)
- 誰が、いつ使うか(朝の食卓か、夜の一人時間か、贈り物か)
- 使ったあと、どんな気分になるか(ほろよい、ぽかぽか、すっきり)
3つのうち、いちばん強いものを一つだけ名前に載せます。全部を載せようとすると「北海道小麦の無糖朝食グラノーラ」という説明文になり、棚では読まれません。
手順2. 商品名の「6つの型」から選ぶ
商品名の型は、店名より多く、しかも一つの商品に複数の型を重ねられます(じゃがりこ=音+人名、ポカリスエット=造語+説明)。
| 型 | 例 | 向いている商品 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 1. 音の型(擬音・擬態) | ガリガリ君、ポッキー、ザクザク | 食べる音・触った感じが売りの商品。子ども向け | 音が商品の実感と合っていること。「サクサク」なのに湿っていると裏切りになる |
| 2. 説明の型(会話体・機能) | 写ルンです、お〜いお茶、熱さまシート | 何をする商品かを一瞬で伝えたいとき。新しいジャンルの商品 | 普通名称に近づきすぎると商標が取れない(「冷却シート」は誰のものにもならない) |
| 3. 造語の型 | カルピス、ポカリスエット、ウォークマン | 長く育てるブランド。商標を確実に押さえたいとき | 最初は意味が伝わらない。由来を語れる材料(カルシウム+サルピス)があると育ちやすい |
| 4. 引用の型(物語・神話・歴史) | Bluetooth、Nike、スターバックス | 世界観で選ばれる商品。海外展開を考える商品 | その文化圏で悪い意味・別の商標になっていないかを確かめる |
| 5. 外国語の型 | ヤクルト(エスペラント)、Kindle(英語で「火をつける」) | おしゃれさ・専門性を出したい商品 | 読めない・打てない名前は検索されない。読みをセットで決める |
| 6. 状態の型(使ったあとの気分) | ほろよい、ぽかぽか | 飲料・化粧品・入浴剤など、効果より気分を売る商品 | 効能を言い切る言葉(治る・痩せる)は薬機法に触れる |
手順3. 音と見た目を整える

商品名は、口に出されて広まります。音の設計は、店名以上に効きます。
- 長さ——3〜5音(ポッキー、カルピス、ほろよい)。6音を超えると略される(「ポカリスエット」→「ポカリ」)。略されるなら、略した形が悪い意味にならないかまで見ておく
- 濁音・半濁音——「ガ・ザ・ダ・バ」は力強さや重さ(ガリガリ、ザクザク)、「パ・ピ・プ」は軽さや弾み(ポッキー、ポカリ)。商品の手ざわりと合わせる
- 語尾——「〜ん」「〜り」は余韻と親しみ(ガリガリ君、ほろよい)、「〜ス」「〜ト」は締まり(カルピス、スエット)
- 見た目——パッケージに載せたとき、ひらがな・カタカナ・英字のどれが一番「らしい」か。同じ音でも「ざくざく」と「ZAKU ZAKU」では棚での印象がまったく違う
手順4. 商標を確かめる(商品名ではここが本丸)

店名なら「同じ町に同名の店がないか」で済むことが多いのですが、商品名は全国・全世界で売るものです。商標は先に出した人のもので、あとから同じ名前で売れば差し止めや損害賠償の対象になります。
- 特許庁所管の無料検索「J-PlatPat」で、同じ・似た名前が登録されていないかを調べる。商品の「区分」(食品なら第29類・第30類、化粧品なら第3類、など45区分)ごとに見る
- 普通名称や品質表示は登録できない——「北海道グラノーラ」「無糖ヨーグルト」のような名前は、原則として誰も独占できない(=真似されても止められない)。造語や引用の型が強いのはこのため
- ドメインとSNSのアカウント名が取れるかを、同時に見る
- 外国語で悪い意味にならないか——海外に出すなら、その言語圏の人に一度読んでもらう
SmartNameは商標の調査を行いません。候補が決まったら、必ずJ-PlatPatで確認し、本格的に育てる商品なら弁理士への出願相談をおすすめします。
手順5. シリーズ展開を設計する

売れた商品には、必ず「次」が来ます。味違い、サイズ違い、季節限定。名前が「◯◯ 抹茶」「◯◯ ミニ」と自然に続けられる形かを、最初に確かめておきます。
- 核になる言葉が短いほど、シリーズ名は作りやすい(ポッキー → ポッキー極細、ポッキー 冬のくちどけ)
- 説明の型は続けにくい(「写ルンです」の次は「写ルンです 防水」までが限界)
- 会社名と商品名を同じにすると、2つ目の商品で困る(会社名は屋根、商品名は部屋、と分けておく)
商品名ならではの決まり
| 決まり | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 商標法 | 先に登録した人の権利。普通名称・品質表示・他人の氏名や有名ブランドに似た名前は登録できない、または使えない | 「北海道グラノーラ」は登録不可。「◯◯ピス」のような有名商標のもじりは危険 |
| 景品表示法 | 根拠のない「No.1」「日本一」「最高」は不当表示になる | 「日本一うまい」「売上No.1」を名前に入れない |
| 薬機法 | 食品・化粧品の名前や表示で、病気が治る・痩せるなどの効能を言えない | 「血圧スッキリ茶」「痩せグラノーラ」は不可。「ほろよい」のような気分の言葉は可 |
| 食品表示・公正競争規約 | 原材料や産地を思わせる言葉は、実態と一致していること | 「北海道」を名乗るなら主原料が北海道産であること |
※法律の最終確認は、特許庁・消費者庁の資料と専門家(弁理士・行政書士)にお願いします。
実例:4つの商品で、実際に名付けてみた
ここからは、SmartNameのAIネーミングシステムに4つの商品(いずれも試験用の架空の商品)を依頼し、実際に生成された候補から3つずつを載せます。由来は結果画面でお届けする解説文そのままです。商品の「一言」と、どの型が効いたかにご注目ください。
事例1:北海道の小麦とオーツ麦の、砂糖不使用グラノーラ

事例2:奈良の工房の、手づくり固形せっけん

せっけんは「治る・美白」のような効能を名前に入れられません。だから名前は、手ざわりや気分、作り手の物語を握ります。生成された候補も、効能ではなく「泡・手・湯」の側から名付けています。
事例3:松本の小さな醸造所の、クラフトビール

依頼の要点:東京のIT会社をやめて松本へ。山登りの帰りに飲むビール。定番3種+季節限定なので、「◯◯ ペールエール」「◯◯ スタウト」と種類名を後ろに並べられる形。
ビールは、瓶とラベルがそのまま名前の顔になる商品です。種類名を後ろに並べる前提なので、核の言葉は短く、ラベルの中央に置いて映えるかどうかで見ます。生成された候補も、山と水の景色を短い言葉に畳んでいます。
事例4:製紙会社3代目の、万年筆用ノート

依頼の要点:創業60年の製紙会社が「うちの紙で一番いいノート」を作る。にじまず裏抜けしない紙。表紙に小さく箔押し。海外の文具店でも読める英字。
ノートのように「品質の差が言葉にしにくい」商品では、商標として押さえやすい造語と、紙や筆記の情景を借りた引用が向きます。
※いずれも開発時の試験依頼で実際に生成された候補です(実在の商品ではありません)。実例ギャラリーには、ほかの業種の生成実例もあります
やりがちな失敗3つ
- 説明しすぎる——「北海道小麦の無糖朝食グラノーラ」は商品説明であって名前ではありません。一言に絞り、残りはパッケージに書きます
- 店名の発想で作る——店名の「◯◯珈琲」のように業態語を付けたくなりますが、商品名は棚に並ぶ時点でジャンルが分かっています。業態語より「一つ握った言葉」が効きます
- 商標を後回しにする——パッケージまで作ってから、同じ名前の登録商標が見つかる例が本当に多い。候補が3つに絞れた時点でJ-PlatPatを開きます
費用の目安
ネーミング専門会社に依頼すると、20案で15万円前後が一般的です。SmartNameは独自のAIネーミングシステムにより、6,000円(10案)〜17,000円(40案)。全案に200〜300字の由来の解説文がつき、数分でお届けします。商品名では「6つの型」を系統として設計し、音の型・造語・引用・状態の型を混ぜてお届けします。
よくある質問
会社名と商品名は同じでいい?
最初の商品のうちは同じでも困りませんが、2つ目の商品で分けにくくなります。会社名を「屋根」、商品名を「部屋」と考え、商品名は商品ごとに決めるのが長い目では楽です。
英語の商品名は日本で通じる?
通じますが、読みと書き(検索で打てるか)を先に確かめてください。英字の商品名には、パッケージにカタカナの読みを添えるのが定石です。
商標を取らないと売れない?
取らなくても売れますが、他人の登録商標と同じ・似た名前だと使えなくなります。「使えるかの確認」は必須、「自分で登録するか」は商品をどれだけ育てるか次第です。
AIに商品名を頼むと、どんな形で届く?
17問のヒアリングに答えると、系統(型)ごとに分かれた候補が、読み・言語・語源・200〜300字の由来つきで届きます。決めるのはあなたです。
関連記事:店名の決め方【総合版】 / 会社名の決め方【総合版】 / ネーミング依頼の料金相場